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世界の"おもしろそう"を日本語に訳します



SEKAIWOYAKUSU

世界の"おもしろそう"を日本語に

道路を自動車から取り戻せ!

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現代の街は自動車に支配されている。街中にある無数の道は、自動車のためにデザインされていると言っても過言ではないだろう。自転車、歩行者、街頭で物を売る人たち、その他の自動車の交通手段を使って移動する人びとを細い歩道や自転車専用レーンに追いやっている。自動車が通らない共有スペースは、もはや公園や広場ぐらいしかない。私たちが、このような現代社会の街の不便な現状に気づくことはほとんどないだろう。

しかし、ある人びとは、街は自動車ではなく人びとのためにあるもので、街に車の干渉を受けない共有スペースがより多くなるべきという考えを実現させようとしている。要するに、彼らは自動車のために作られた車道があるために、歩行者や自転車の移動の自由が制限されている現実を解決しようとしている。この考え方を「古い」と感じる人もいるだろう。

しかし、あなたの街にある道路が、自動車の移動を楽にするために碁盤目状に作られていたとしたら、道路をどのように歩行者や自転車などの移動の自由度が増す形へと変え、街にある道路は自動車から人びとのもとに返されるのだろうか?

この問題に対してバルセロナという巨大都市は、1つの驚くべきほど賢明な解決策を提示した。

スーパーブロック

バルセロナを訪れたことがある人びとなら分かるだろうが、バルセロナは、地球上でもっとも歩きやすく、歩行者に優しいデザインをしている街だ。バルセロナの街にある道路では、その日に取れた野菜や果物を売るマーケットが開かれていたり、歩道にはカフェのイスとテーブルが並び屋外でお茶や食事を楽しめ、街にはいつも活気がある。

しかし、最近では自動車による交通渋滞が慢性化しており、街は排気ガスで汚染された空気がこもっている。現在のバルセロナにおける空気汚染は、過去数10年で最も酷いものだろう。バルセロナ市は、2014年にアーバン・モビリティ・プランを開発した。これは、人びとの移動を自動車以外の交通手段にも優しいものにする都市計画のことだ。この背景には、自動車による排気ガスや二酸化炭素の排出を減らし、環境を保全するために脱・車社会を目指す流れがある。要するに、都市部を自動車から人びとのもとへ返すという試みである。

アメリカでは、このような「街を自動車から人びとのもとへ返す」というコンセンサスを作ることは不可能に近い。アメリカは巨大な車社会であり、自転車専用レーンに対する非難は大きい。こういった社会にするアメリカ人にとっては、総距離186マイルにも及ぶ新しい自転車専用レーン、より多くの停車場と運行数が増え、利便性が向上したバスシステム、街中に増えたグリーン・スペースなどを導入したバルセロナがの試みは、素晴らしいものだ。

しかし、バルセロナのアーバン・モビリティ・プランの中で、最も素晴らしいアイデアは、バルセロナに拠点をもつアーバン・エコロジー・エージェンシーのSalvador Rueda氏によって開発された"スーパーブロック"という仕組みだ。

スーパーブロックは至ってシンプルな仕組みだ。碁盤の目のように区分けされた街中のブロック9つを1つのセットにする。スーパーブロックは、必ずしも9つのブロックを1セットしなければならないわけではないが、この組み合わせが理想的だ。1つ、1つのブロックに通る道路に対して自動車の移動を許可するのではなく、スーパーブロック(9つのブロック)の外側にある道路にだけ自動車が移動できるようするのがスーパーブロックという考え方だ。よって、運送会社や市営バスは、スーパーブロックの外側を走らなければならない。

スーパーブロックの中を通る道路には、地元住民の自動車、自転車、歩行者のみが通行できるようにし、自動車は時速10キロで走行しなければならない。また、スーパーブロック内の道路はすべて一方通行になっている。

下記の画像は従来の交通網とスーパーブロックの違いを表したものなので、参照して頂きたい。

 

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出典:BNC Ecologica, via Cities of the Future 

 

左側は従来の交通網が示されており、黒線で示されている道路は自動車、市営バス、自転車、歩行者のすべてが通行かのうであり、自動車の制限速度は時速50キロだった。

右側はスーパーブロックを示しており、緑線で示されている道路には地元住民の自動車、歩行者、自転車のみが通行できるようになっている。なお、緑線で示されている道路を自動車が通る際には時速10キロの制限が設けられている。黒線で示されている道路は、従来の交通網と変わらない。

こうすることによって、9つのブロックで構成されるスーパーブロックは、1つの小さな村のようになり、村の中を通る道路やスペースは、公平に自動車、歩行者、自転車と共有されることになる。

スーパーブロックという画期的な試みは、2つの段階に分けて実装された。

下記の記事では、この2つの段階が次のように説明されている。

www.citiesofthefuture.eu

第1段階では、少ないエリアのみにスーパーブロックを適用し、スーパーブロック内の道路の制限速度を20キロに制限した。第1段階では、基本的に道路標識を変更すれば良いだけなので、導入するのは簡単で、大きな予算も必要ない。前出のRueda氏は、バルセロナ市が街中に第1段階を実装するのに必要な予算は、2,000万ユーロ以下だと予想している。

 

第2段階は、より大掛かりな仕事となる。なぜなら、この段階では、バルセロナ市に住み、働く人びとにスーパーブロックに慣れてもらい、人びとの公共空間の使い方も変えてもらわなければならないからだ。スーパーブロック内の歩道の脇にある駐車スペースは撤去し、別の場所に駐車スペースを作り、制限速度を時速10キロに制限し、人びとが道路を遊び、スポーツ、文化的な活動や屋外シネマを行えるように環境を根本から変える必要がある。これは大仕事だ。

下記の画像は、前述の2つの段階を表した図だ。左側の図は、第1段階をしめしており、右側は第2段階を示している。

 

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出典:BNC Ecologica, via Cities of the Future 

 

昔ながらの路上で開かれていた市場、街を活気づけるイベント、人びとの憩いの場となる広場が街に戻ることによって、街全体が脱・自動車社会を体現するものに変わっていくのだ。

もし、スーパーブロックがバルセロナ全体に導入されたとすると、自動車のみが通行できた道路のうち60%を歩行者と自転車も使えるようになる。もしくは、自動車の通行が完全にない道路となるとRueda氏は語っている。

バルセロナ市議会はスーパーブロックによって、次の6つの目標の達成を目指している。

1. より持続可能なモビリティ(移動性)

2. 公共スペースの再活性化

3. 生物の多様性と緑化の推進

4. 都市部の社会構造と一体性の促進

5. 資源の自給自足の促進

6. 住民のバルセロナ市の政策参加

 

スーパーブロックの導入は、同じ空間と資源の共有を通じて、ブロック毎に小さなコミュニティーを形成し、人びとと近くにあるブロック毎の繋がりも強くするだろう。その気になれば、マイクログリッドの導入だって夢じゃない。

スーパーブロックは、バルセロナ市内のいくつかのエリアで導入が始まっており、今後も導入されるエリアは増える予定だ。下記は、バルセロナ市内でスーパーブロックが導入されているエリアを示した地図だ。

 

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出典:Ajuntament de Barcelona

 

スペイン国内にある他の街もスーパーブロックの導入に興味を示しており、Rueda氏は、スーパーブロックはどのような街でも、どのような国でも導入することが可能であると説明している。新しく街の交通インフラを設計するよりも、スーパーブロックを導入する方がコストは安価に抑えられる。

スーパーブロックは、バルセロナのような碁盤の目のよう整理された道路がある街に導入しやすい。かといって、そうでない街は、スーパーブロックの基本的なコンセプトを導入できないというわけではない。その街がもつ道路構成の特徴にあわて、スーパーブロックを配置すれば良いのだ。

あなたが住んでいる街や近所にスーパーブロックが導入されたとしたら、どうだろうか?自動車が通行できる道路は制限され、スーパーブロックの内側にある道は、自動車の通行という制限から解放され、道路の真ん中でライブバンドが演奏したり、採りたての食品が変えるマーケットが開催され、自転車と家族連れの人びとが街を自由に行き来している。子どもたちは、道路を自由に走り回り、大人たちは活気のある自由な街を見つめながら、カフェが歩道に設置したテーブルでエスプレッソを楽しむ。

こんな街になったら素晴らしいだろう?

 

元記事:Superblocks: how Barcelona is taking city streets back from cars

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